ココが知りたい温暖化
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海面上昇で消える島国
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質問
温暖化を話題にしたテレビ番組で、海に沈む島と称して、大潮のときに海水が地面から湧き出して膝まで浸かっている映像が映されたりします。これは、温暖化による海面上昇の影響が既に現れているということなのですか。
私が答えます:地球環境研究センター 温暖化リスク評価研究室 主任研究員 高橋 潔

テレビで「海に沈む島」として良く取り上げられる島に「ツバル」があります。ツバルは南太平洋に位置する9つのサンゴ島で構成された国です。このうち、例えば首都フナフチがあるフォンガファレ島の平均標高は1.5m、最も高い地点でも約4mしかありません。質問は、ここの島で撮られた映像のことを指しているものと思います。

空から見たツバル
空から見たツバル(写真提供:久保田泉氏)

フナフチで測定される潮位は季節により上下し、高い時と低い時で20〜30cm程度の差があります。また、潮汐による干満の差は大きい時では2mを越します。よって、潮位が高くなる春先の満潮時には、標高が低い地域では海水面より低くなってしまうところも出てきます。サンゴ礁の上に砂が堆積して出来た島ですので、満潮時に海水面以下になる地域では、地盤(サンゴ礁)の穴を通じて水が滲み出してきます。島のあちこちで海水が地面から湧き出す現象は以前からも観測されてきたもので、温暖化により初めて生じるようになった訳ではありません。

しかしながら、近年その地面からの湧き出しによる洪水が深刻化しつつあるとの住民の証言があります。これは、どのように考えればよいのでしょうか。

ツバルでは、海面上昇は本当に起きているのか?その原因は温暖化か?

 全球平均で見た場合、20世紀に観測された平均海面上昇速度は1〜2mm/年でした。主として20世紀の温暖化傾向が、海水の熱膨張と陸上雪氷の融解を通じて、この観測された海面上昇を引き起こしたことが分かっています。

では、ツバル付近の地域的な海面水位についてはどうでしょうか。豪州国際開発局の出資で1993年以降継続して行われている信頼出来る計測によると、フナフチにおける2005年6月までの過去12年間の平均潮位の上昇傾向は、4.3mm/年でした。この期間についていえば、なんらかの理由により平均潮位の上昇傾向があったといえます。しかしながら、観測期間が短いために、長期の変化傾向とは直接関係の無い短期的な海洋の変動性(例えばエルニーニョによるもの)の影響を強く受けており、長期的な上昇傾向や温暖化の影響の大きさについては、現時点では断定的なことは言えません。今後も潮位計測を継続することで、この平均潮位の上昇傾向が一時的なものかどうか、温暖化がどれくらい寄与しているかなど、さらに詳しい情報が得られるようになると考えられます。

洪水被害の深刻化の原因は?

ツバルにおける海水の湧き出しによる洪水の深刻化は、潮位だけでなく、島の地形、土地利用、地下水、降水、波力など複数の要因が関わって生ずる現象であると考えられますが、その全体のメカニズムは十分に解明されていません。しかしながら、原因と疑わしきものをいくつか挙げることが出来ます。

まず、上述の近年の短期的な平均潮位の上昇傾向は、その原因の候補の一つです。また、月・太陽と地球の位置関係によって起きる潮の干満と潮位の季節変動との組み合わせにより、毎年春先に記録される年間最高潮位は約4年半の周期で上昇・下降することが分かっており、年間最高潮位は高い年と低い年で10cm以上の差があります。この年間最高潮位の周期的変化は平均潮位の変化傾向には直接影響しませんが、大きな洪水が生ずるのは、その年間最高潮位が発生する時ですので、これもまた島の住民が証言する洪水被害の深刻化に関わりがあるかも知れません。

さらに、20世紀に続いた人口増加にともない、1970年代以降に、沼沢地を埋め立てて出来た低地にまで居住地が拡大されてきたことが分かってきました。それらの地域の中には、春先の高潮時に海水面以下となるところもあり、海面上昇に対して脆弱な地域への居住者が増えたことになります。そのような社会的条件の変化も、高潮時の洪水被害増加に関わりがあると考えられています。

ツバルでの海面上昇対策は必要か?

将来に目を向けた場合、IPCC第3次評価報告書によると、温暖化により海面が上昇することはかなり確からしく、気候モデルを用いた今後100年の全球平均の海面上昇量は9〜88cm(幅は将来の温室効果ガスの排出量見込みや予測に用いられた気候モデルの違いによる不確実性)と予測されています。例えば、50cmの海面上昇が生じるとすれば、洪水の規模・頻度が急激に高まると予想できますので、対策の実施はどうしても必要になります。海面上昇に対して脆弱な地域からの住居の撤退を含む対策を早い段階から検討しておくことの重要性は高いといえます。

(本回答の作成に際して、茨城大学三村信男教授、国立環境研究所山野博哉主任研究員より、有用な助言を頂戴しました。ありがとうございました。)

さらに良く知りたい人のために
神保哲生 (2004) ツバル 地球温暖化に沈む国. 春秋社.
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