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リサイクルって温暖化対策になるの?
質問
紙やペットボトルのリサイクルは温暖化対策になりますか。
循環型社会・廃棄物研究センター長 森口 祐一
リサイクルの主な目的は、温暖化対策ではなく、ごみを減らし、資源の節約につなげていくことです。紙やペットボトルを適切にリサイクルすれば、ごみとして燃やすよりも、温室効果ガスの排出を減らせます。使う量が同じならリサイクルすることで温暖化対策になりますが、リサイクルすれば安心と考えて、大量に使ったのでは温暖化対策にはなりません。リサイクルのためのごみの分別をきっかけに使い捨て型の消費を見直し、資源・エネルギーの無駄使いを減らしていくことがより大切です。

温暖化とごみ問題との共通の根 −大量消費型の社会−

温暖化はとても重要な問題ですが、解決すべき環境問題は他にもあります。増え続けてきたごみを環境に悪影響を与えないように処理することもその一つです。リサイクルは、処理すべきごみを減らし、資源を節約することを主な目的に進められてきました。温暖化もごみ問題も、紙やペットボトルを大量に使って捨て、物質的に豊かな生活を営むという、現在の生産・消費のあり方と密接に関係しています。そうした今の生活自身を見直していくことが、ごみ問題や温暖化問題の根本的対策として大事ですが、これは一朝一夕に実現できることではありません。その第一歩として紙やペットボトルを捨てずにリサイクルすることで、温室効果ガスの排出量がどう変わるのかを比較してみましょう。

リサイクルによる効果:リサイクルする場合としない場合とで何が違うか

リサイクルすることで減らせるのは、@リサイクルせずに燃やしたり埋め立てたりした場合にごみ処理のために排出される温室効果ガスと、Aリサイクル製品が作られなかった場合に同等の製品を作るために必要となる燃料消費や資源消費に伴う温室効果ガスの排出、です。一方、リサイクルすることでかえって増えるのは、B分別して収集・回収するための燃料消費に伴う温室効果ガスの排出と、C回収した再生原料から再生製品に加工するために必要な燃料消費に伴う温室効果ガスの排出です。これらの差、すなわち(@A)−(BC)をリサイクルの効果、とするのが、この分野の研究における一般的な考え方になっています(図1)。

Figure19-2

[図1]紙やペットボトルをリサイクルする場合としない場合の比較

リサイクルにはお金がかかり、かえってエネルギーの無駄、という意見も聞かれます。ペットボトルのリサイクルの場合、とくにBのコストが高いのですが、これは主に分別収集や自治体の中間処理施設での異物の除去などのための人件費であり、収集車の燃料代はコストの数%にすぎず、エネルギー消費やCO2排出量が大きいということではありません。

ペットボトルは、主に制服やワイシャツ、カーペットなどの繊維製品の原料や、卵パックの材料などに再生されています。リサイクルされなければ焼却されると仮定した場合、こうした再生品にリサイクルすることによるCO2の削減効果はペットボトル1kgあたり2kg程度と推定されています。仮に現在消費されている年間50万トンのペットボトルが全部リサイクルされた場合、CO2削減効果は100万トン程度、日本の全CO2排出量に対して、0.1%弱に相当します。ペットボトルは、ごみのかさとしては大きな割合を占めていますが、そのリサイクルだけでCO2が大幅に減るわけではありません。また、ペットボトルを一度化学的に分解すると、再びペットボトルにリサイクルすることができますが、この場合にはCでのエネルギー消費が繊維製品へのリサイクルよりも大きいため、CO2の削減効果は小さくなります。

なお、Aでごみとして焼却処理し、発電してエネルギーを回収する方法もありますが、ペットボトルの発熱量はほかのプラスチックの半分程度しかなく、ごみ発電の効率の低さも考慮すれば、リサイクルの効果に勝るレベルには達しません。さらに、分別せずに燃やすことは、大量にものを使い、捨てることを助長するのではないか、との意見もあります。

紙のリサイクルは温暖化、森林保全、廃棄物が複雑にからみあった問題

では、紙のリサイクルについてはどうでしょうか。ペットボトルも紙も炭素を含んでいますが、ペットボトル中の炭素は原料の石油に含まれていたものであるのに対し、紙に含まれる炭素は、木材に含まれていたものです。石油から作られた燃料やペットボトルを燃やすことで発生するCO2は大気中の温室効果ガスの増加に寄与しますが、紙やその原料を燃やすことで発生するCO2が温暖化に寄与するかどうかは、原料となる木材が、どのような条件で生育したかにまでさかのぼって考える必要があります。

「リサイクルすることで、木材が何本伐採されずにすみます」、というような表現がよく使われますが、伐採、植林のサイクルが適切に行われるならば、伐採すること自身が問題とはいえません。紙の原料としての木材需要をまかなうために、森林が伐採され、そのために森林の蓄積が減少していれば、大気中の温室効果ガスの増加につながります。

木材から新たに紙を生産する工程では、木材から紙の原料となる繊維を取り出した後に残る成分を燃料として利用できるのに対し、古紙のリサイクルでは、主に化石燃料が使われています。現在の算定方法では、植物由来の炭素は燃焼させた段階では排出にカウントされないため、リサイクルのほうがかえって日本からのCO2排出が増える、という状況が起こりうるのです。ところで、日本の紙の原料の大半は、海外から輸入されています。植物由来のCO2も、木材の消費国で実際に大気中に排出された時にカウントする算定方法がとられた場合には、紙のリサイクルの温暖化対策としての効果はより大きく評価されることになります。紙のリサイクルが温暖化対策になるかどうかは、ペットボトルの場合よりもかなり複雑なのです。

リサイクルが消費形態の転換につながるかどうかが要点

日常生活の中では、ごみを分別することがリサイクル、と考えられているかもしれませんが、これは適切ではありません。分別したものが、きちんと再生されて使われ、その分、新たな資源が節約されてこそ、リサイクルの環がつながるのです。分別には協力するが、リサイクル製品は使いたくない、分別さえすれば、紙やペットボトルをどんどん使っても構わない、と皆さんが免罪符のように考えているならば、「リサイクルは温暖化対策にはならない」といわざるを得ません。

リサイクルは、社会全体の資源やエネルギーの無駄使いを見直し、消費者が環境問題に取り組む重要なきっかけです。リサイクルが終着点なのではなく、リサイクルへの参加を通じて、ライフスタイルの見直し、省エネ行動につながれば、その副次的な効果こそが温暖化対策として重要なのではないでしょうか。

さらにくわしく知りたい人のために
○ 森口祐一, リサイクルについての疑問と的確な情報提供の大切さ. 環環, 2007年7月17日号
http://www-cycle.nies.go.jp/magazine/kinkyou/20070717.htm
○ 岡山隆之, 平尾雅彦, 森口祐一, 安井至(協力)(2008)リサイクルは有効か?. Newton, 2008年4月号, 68-73.
○ 森口祐一, ごみ問題・3Rと温暖化のかかわり. 独立行政法人国立環境研究所公開シンポジウム2008(6月21日および28日開催)
http://www.nies.go.jp/sympo/2008/index.html
リサイクルと温暖化対策の関係だけではなく、ごみ問題全体について知りたい人のために
○ 松藤敏彦(2007)ごみ問題の総合的理解のために. 技報堂出版.
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