

温度計による気温の直接観測が行われるようになったのは1850年頃からですが、現在一般的に算出されている地球の平均気温には、陸上のデータだけでなく、海洋のデータも考慮されています。また、観測機器や観測場所、周辺環境などの変化の影響もできるだけ取り除く努力が行われています。地球上に不均一に分布する観測データは、まず緯度5度×経度5度に格子点化され、さらに面積の重みを付けて平均することで、全球平均気温が算出されています。以下では、それぞれについて具体的に説明していきましょう。

まず、陸上の気温データですが、現在では世界に7000前後の観測地点が存在しています。地域的な分布にはかなりのばらつきがあり、欧米などでは非常に密に存在している一方で、サハラ砂漠やシベリア北部、アマゾン奥地などでは観測点が少ないです。ただし、これらの地域にも数百kmに一点程度の割合で観測点が存在しますし、観測の空白域は面積的にもそれほど大きくはありませんので、地球の平均気温の算出には大きな影響はないと考えられます。
次に、海洋のデータですが、地球の平均気温を算出する際の海洋上の大気温度として、海洋表層の海水温度が代用されています。海洋表面の水温はさまざまな船舶により観測されており、昔はバケツで海水を汲み上げて計測されていましたが、近年では、エンジンの取水口近くに設置した温度計により計測されています。海洋上の気温も船の甲板上で観測されていますが、船舶のヒートアイランド効果(甲板が日射を受けて熱を帯び、甲板上の大気を暖める効果)のため、夜間のデータしか活用できないなどの制約があります。また、1カ月以上の時間スケールを考える上では、海洋表面の水温変動と夜間に観測された海洋上の気温変動がほぼ等しいことが知られているため、海洋上の大気温度として海洋表層の海水温度を代用することに大きな問題はありません。
地球の平均気温データに見かけの変化をもたらし得る要因としては、(1)観測機器の劣化や更新に伴う変化、(2)観測場所の変化(経緯度や標高)、(3)観測時刻や月平均値算出方法の変化、(4)都市化などの観測点周辺環境の変化、が挙げられます。このうち、(1)〜(3)については、物理的な考察や統計的推定、変化前後の同時観測などによる補正が行われています。(4)についても、周辺の観測点との気温差が年々増大している地点を除く、などの対応が取られています。これらとは別に、人口や土地被覆、衛星から見た夜間地上光などの分布から都市と田舎を峻別し、平均気温に対する都市化影響の有無を評価する研究も行われています。また、都市によるヒートアイランド効果は夜間の弱風時に顕著であるため、夜間の地上風速データを活用した都市化影響評価も行われています。これらの結果はいずれも、大陸規模以上の空間スケールで平均した気温については、都市化の影響はほとんど無視できることを示しています。
地球の平均気温を求めるには、まず初めに各観測点の気温の平年値(西暦の一の位が1の年からの30年平均値。例えば1961〜1990年の30年平均値など)からの差を求めます(これを平年偏差と呼びます)。次に、地球を緯度5度×経度5度に分割した各格子内に存在する観測点の平年偏差を単純に平均して格子点データを作成します。格子点化された平年偏差のデータに、各格子の面積の重みを付けて平均することにより、地球の全球平均気温(平年偏差)の時系列を算出します。なお、ここで用いる「全球平均」は、「観測データが存在する限られた格子点の面積重み付き平均」を意味します。また、図に示しますように、平均操作に用いられる格子点数も現在から過去に遡るにつれて減少していきます。このような、観測データが地球上の限られた地域にしか存在しないことによる誤差は、せいぜい±0.1℃程度と見積もられています。
このようにして算出されている地球の平均気温からは、20世紀の100年間で平均地上気温が約0.6℃上昇したことが分かります。この上昇速度は、年輪や堆積物などから推定された過去2000年間の気温変動にも例を見なかったほど急激であったと考えられています。特に、1970年代以降の気温上昇は顕著であり、100年間で1℃以上も気温が上昇する勢いです。この気温上昇の原因はいったい何でしょうか。詳細はまた別の機会にご説明したいと思いますが、気候モデルを用いた統計的推定によれば、近年の気温上昇は、二酸化炭素を始めとする温室効果気体の濃度増加なくしては説明できないと考えられます。人間活動が気候に重大な影響を与え始めていることは、ほぼ疑いようのない事実であると言えるでしょう。
地球温暖化の原因、機構、影響等を、図とテキストを用いて解説しています。
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